美大から航空業界、さらにMBAと今後のキャリアパス
私は、美術大学でプロダクトデザインを学んだ後、エンジニアリングや製造の現場に興味が湧き、新卒で世界トップシェアを誇る航空機内装品メーカーに入社しました。会社で5年ほど、ビジネスクラスシートや、ギャレー、ラバトリーなどのデザインや次世代製品の研究開発に携わるうちに、イノベーションに重要なのはデザインだけでなく、企業間コラボレーションや経営課題だと感じる様になりました。よりマネジメント側の意思決定の構造を理解したいと思い、MBA(経営学修士)を取得することを目指し、今に至ります。それぞれのステップで真剣に取り組む中で、自身が疑問に感じたことを踏み台にして進んでいたら、結果的にまだ多くの人が歩んだことのない道を進むようになりました。
現在は、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院のMMMプログラムに在籍しており、MBAとデザインイノベーションの二つの学位を取得するために勉強しています。
マーケティング、ファイナンス、ストラテジーなどの経営学はもちろんのこと、起業プロセスやデザインシンキングなど、イノベーションに直結する様な分野も同時に学んでいます。
MBA取得後はビジネスデザイナーになりたいと考えています。ビジネスデザイナーは多くの場合、デザインファームでUX/UI/プロダクトデザイナーなどとチームを組みながら、ビジネス側(市場理解、ビジネスモデル、収益性など)の視点を持ってプロジェクトに参加します。デザインもビジネスも両方理解した上で柔軟な発想を要求されるという点で、両方を経験した私自身の強みも生かせる領域だと感じています。
将来的には、経営層とデザイナー、さらに企業内の様々な部門を横断的に繋ぎ、新規事業開発やイノベーションをお手伝いすることで、日本の製品やサービスをグローバルに届けることに貢献したいと思っております。
小規模ながら独自のポジションを確立しているi.labに感じた魅力
欧米の2年制MBAコースの場合、1年目が終わった直後の6月〜9月の間は授業がないため、多くの学生はコース修了後に進みたいキャリアに近いインターンシップを通して職場体験をしています。私もその一環でi.labにお世話になっています。
私自身がインターン先として探していた条件として、下記の3つがありました。
- 様々な分野の企業とのプロジェクト経験があるコンサルティングファームでビジネスデザイナー職があるところ
- 少人数の環境
- 製造業ではない内容のプロジェクトで、実際に貢献できるところ
いずれも、今まで経験したことがないところで自分の力を試したいと思って設定した、自分なりの判断基準です。
その中で、i.labは3つとも揃うだけでなく、日本企業のマネージメント層と相性の良い独自のノウハウを蓄積していることにとても魅力を感じました。さらに、i.labメンバーにMBA保持者の寺田さん(
Director)がいるということで、私自身のバックグラウンド含め学べることが多いと感じたことがきっかけとなりました。
プロジェクト開始準備と気づき
インターンでは、あるクライアント企業様のプロジェクトに参加しています。
まずは、プロジェクト開始後にプロジェクトやワークショップがスムーズに滑り出せるよう、事前のリサーチやワークショップ検証を行いました。(※1)
※1 i.labでは、定期的にR&Dや新規事業のビジョン策定のプロジェクトを行なってます。
<参考資料>
・研究開発ビジョン策定:未来の暮らしと住まいを人間起点で考える
https://ilab-inc.jp/works/lixil/
・ものづくり企業LIXILが10年後を見据えて取り組む、イノベーションを起こし続ける組織づくりとは
https://bizzine.jp/article/detail/3550
LIXILさんのプロジェクトで公表されているのと同様に、今回のプロジェクトでも、クライアント企業チームと一緒になって、未来の社会を洞察し、それらを用いて会社の新規事業のビジョンを策定することを目標としています。
未来発想を行うプロジェクトでは、論理的な考え方だけではなく、柔軟な想像力も求められ、クライアント企業の社員の方にとっては普段の業務とは違う発想の仕方が必要となります。そのため、作業風景を思い浮かべながら、ワークショップの内容が初めての方でもできる内容かどうか、どのようなサポートと事前準備が必要か、などを思い浮かべながら検討を進めてきました。
実際に数回ワークショップの試行をした結果、確実性の高いトレンドと不確実性があるが斬新な切り口のある未来の兆しを組み合わせて発想を飛ばすような考え方は、個々人の経験や思考の癖に依存することが多いと感じました。ワークショップ検証では、他のインターン生と協力してアイデア出しなどを行いました。個々の専攻や普段の生活での関心ごとによってそれぞれ発想できる内容が異なり、チーム全体で多様な視点を持つことで、一辺倒ではない切り口で未来を考えることや、結果的に品質の向上につながるように思います。
未来の兆しを探す難しさ
今回私は未来の兆し(スキャニングマテリアル)のリサーチを積極的に行いました。スキャニングマテリアルの作成に関しては、インターネット上でも参考記事は出てきますが、下記は実践してみて感じた課題点や気づきです。
ミクロな出来事にフォーカスする
・社会的な変化や生活の中の質的な変化を捉えようとした際、どうしてもマクロな事象を捉えたくなりますが、兆しではあえてミクロな事象を捉えることを常に意識するよう心がけました。
元記事の鮮度と面白さと拡張性
・面白さに関しては、個々人のその分野への精通度や経験によって新しさに気づけるかどうか、というところにつながるように思います。少しオタク的なこだわりと知識欲があると、新しさを発見できる一方、社会的広がりの示唆を感じるかということはゼネラリスト的な感性が必要なのかもしれません。
端的に面白さを伝える書き方にすること
・どこに面白さを感じたのか、タイトルからすぐに内容を想像できるようにまとめることが重要、と塚原さん(
Service&Business Designer)から指摘をもらいました。しかし、適切な情報量で端的に伝えることに関しては練習が必要で、何度も書き直しました。
スキャニングマテリアルでは、「面白さ」が重要です。しかし、個々人がなぜ「面白い」と感じるのかを言語化することが難しく、インターン生の間でも共有することは大変でした。私個人としては、今まで組み合わさることのなかった異分野(例:「銀行」と「婚活」)が出会ったり、今までになかった価値観が許容されるような変化を象徴する動きであったり(例:「家族」の枠組みを超えた「墓友」)、日常の行動が変わるようなサービスが始まったり、ということに面白いと感じています。さらに、まだメインストリームになっていない出来事の方が心をくすぐるように感じます。ただ、果たしてそれが他の人から見ても面白いのか、同じ基準で他の人が記事をピックアップした時に良いスキャニングマテリアルになるのかは、今でもうまく言語化できていないところです。
スキャニングマテリアルだけでなく技術や社会的なトレンド、どれをとっても未来にどのように波及していく可能性があるのか、さらに、プロジェクトの目標であるクライアント企業の将来像とどのような関わりがあるのか、自分の中で仮説を立てられるものをピックアップしていくようにしています。しかし、「波及していく可能性」の勘所は、日々、世の中で起こっていることや、生活の中での出来事がどのように社会とつながっているのかを普段から気にして見ておくことでしか育めないと感じています。自分とは違う価値観を持った人とたまに雑談したり、街中を歩いて新製品を見てみたりすることも気づきを得るために重要だと感じており、現在のコロナ禍では、意図的に新しいものへの露出を増やす工夫をしないと偏ってしまう気がしています。そのため、あえて新しいことにチャレンジしてみたり、普段なかなか会わないような人の意見を聞けるイベントに参加してみることも重要なのではないでしょうか。
以上、「こんな人もいます」ということで私自身のバックグランドと、インターン中に参加したi.labでの活動をご紹介しました。常に自分が面白いと感じたことを指針にして進んできたキャリアでしたが、今回i.labでインターンする中で自分の経験が活かせると感じ、嬉しくなるシーンも多々ありました。その一方で、自発的な働き方や、クライアント第一に考えるコンサルティングならではの仕事は初体験も多く、日々色んなことを学んでいます。
インターンは残りわずかですが、引き続きi.labとその先にいるクライアントのお力になれるよう頑張りたいと思います。