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“Path to Innovation”は、イノベーション・コンサルティング会社i.labが運営するWEBジャーナルです。

イノベーションに関連した、アイデア創出手法やマネジメント方法、さらに、おすすめの論文や書籍について紹介します。また、注目すべき先端技術や社会事象などについても、イノベーションが発生し得る「機会」としての視点から解説していきます。

Society

マクロとミクロのハイブリッド視点でみるアフター/ウィズコロナの”未来社会”(3/3回)

i.labでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によって私たちの日常が中長期的にどのように性質変化するのか、「休み」を切り口として設定し、未来社会を考察する社内研究プロジェクトを行いました。最終回の今回は、各シナリオにおいて考察した機会領域とアイデアについてご紹介します。

Hitoshi Suzuki / 2021.2.22

(以前の記事は、i.labブログ「path to innovation」 からお読みいただけます。1回目記事はこちら、2回目記事はこちら。)

機会領域を設定することの有用性


まず、機会領域とは、「これから創出するアイデアの方向性を事前に定める情報」です。機会領域は一般に言われる「コンセプト」に近い情報ですが、i.labでは機会領域の構成要素を図1のように、より具体的に定義しています。アイデアの新規性や事業上の有効性を事前に担保できる点や、それ自体を0→1の中間成果物としてストックし、別の機会にも活用できる点で、機会領域の設定はアイデア創出系のプロジェクトにおいて有用な手段と言えます。

それでは、各シナリオにおいて有望と思われる機会領域とアイデアをご紹介していきます。図1:機会領域とは

機会領域とアイデアの紹介:シナリオ01


シナリオ01は、コロナが断続的な再流行・収束のサイクルを繰り返しており、その中で人と話す約束をする時の方法選択として、オンラインが多数派の世界です。シナリオ01の特徴として、人々の日常生活が基本的に自宅で完結していることが挙げられます。その中で、毎日見る風景が変わらないことで季節の移り変わりに鈍感になったり、偶然の出会いや発見の機会(セレンディピティ)が減ったりすると考えられ、それらを自宅で感じられることが新しい価値になると考えました。

以上を踏まえ、今回は次のような機会領域とアイデアを作成しました。

毎月、自宅に観葉植物が届き、先月届いた分と交換するサイクルを繰り返すサブスクリプションサービスです。普段見かけないレアな植物や、季節に合った植物が届くので、自宅の雰囲気を変え気分をリフレッシュしたり、セレンディピティを自宅で感じられたりします。アプリを開いて植物の特徴やケアの方法を学べるので、新しい発見や学びの機会にもなります。図2:定期的に自宅の変化を楽しめるサブスクボタニカル

機会領域とアイデアの紹介:シナリオ02


シナリオ02は、コロナが一気に収束し、その中で人と話す約束をする時の方法選択として、オンラインが多数派の世界です。シナリオ02の特徴として、リモートワークを活用して働く場所を自由に選択できることが挙げられます。その中で、時には自宅以外の場所で気分転換しながら働くことへのニーズが高まり、それに伴い、どこにいてもすぐにリモートワーク環境を構築できることが新しい価値になると考えました。

以上を踏まえ、今回は次のような機会領域とアイデアを作成しました。

携帯できる組み立て型の椅子と机のセットです。車に載せられ、片手で持ち運べるコンパクトな形状で、移動先ですぐにリモートワーク環境を構築できます。時には、ドライブを兼ねてたどりついた大自然の中で、椅子と机をぱっと広げ、良い景色を眺めながら落ち着いた気分で仕事をすることもできます。図3:どこでもリモートワーク環境を構築できるポータブルワークキット

機会領域とアイデアの紹介:シナリオ03


シナリオ03は、コロナが一気に収束し、その中で人と話す約束をする時の方法選択として、直接対面が多数派の世界です。シナリオ03の特徴として、人と直接対面で会える/会えないの他に、「どうしても都合が悪い場合はオンラインで会う」という、コロナ以前に無かった新たな選択肢があることが挙げられます。オフィスに出社しているスタッフの中でも、オンラインで仕事をする人(オンラインワーカー)と目の前の相手と直接対面しながら仕事をする人(対面ワーカー)が混在する状況が起き、その際に双方がストレスなく共存できることが新しい価値になると考えました。

以上を踏まえ、今回は次のような機会領域とアイデアを作成しました。

ノイズキャンセリング機能のついたマイクです。使用者の口元近くで発話を打ち消す波を発生させることで、周囲に使用者の話し声を漏らさない仕様になっています。オフィス内でオンラインワーカーと対面ワーカーが混在する状況や、出先でのミーティングから帰る途中でカフェにいる状況であっても、セキュリティやマナーを気にせずオンライン会議に参加することができます。図4:周囲に話し声が漏れない発話キャンセリング機能付きマイク

機会領域とアイデアの紹介:シナリオ04


シナリオ04は、コロナが断続的な再流行・収束のサイクルを繰り返しており、その中で人と話す約束をする時の方法選択として、オンラインが多数派の世界です。シナリオ04の特徴として、感染リスクが常にある中で、そのリスクを許容できる条件について異なる人々が対面で会う、もしくはその努力をする点が挙げられます。そのような状況下では、既存サービスの感染リスクを極力下げ、リスクを許容できる条件が異なる人たちでも気兼ねなく利用できることが新しい価値になると考えました。この価値は、自発的に会うという点で、仕事ではなくプライベートにおいて高まると考えられます。

以上を踏まえ、今回は次のような機会領域とアイデアを作成しました。

車で立ち寄れる個室温泉施設です。一つ一つが完全に個室なので、不必要に他人と接触することなく(感染リスクを気にすることなく)利用できます。車で立ち寄るため、施設に行く途中の感染リスクも低く抑えることができます。図5:車で立ち寄れ、プライベートな環境で温泉を楽しめるパーキング型個室温泉

全3回に渡ってお送りしたアフター/ウィズコロナの未来社会考察シリーズ。コロナによって人々の価値観や行動の変化が急激に起こっている中で、これから起こりうる未来と、その未来における打ち手として有望な機会領域とアイデアをご紹介しました。i.labでは本プロジェクトのような未来考察プロセスに関する知見を有しており、様々なテーマに応用が可能です。ご質問やご相談などございましたら、お気軽にお問い合わせください。

プロジェクトメンバー:横田幸信、寺田知彦、井上拓、山田哲也、塚原章裕、島村祐輔、島田怜南、鈴木斉
イラスト:島田怜南
Author
鈴木 斉

Hitoshi Suzuki
Business Designer

東北大学工学部機械知能航空工学科卒業、東北大学大学院工学研究科技術社会システム専攻修了。学生インターンを経て、修了後i.labに新卒で入社。在学時に機械工学、技術経営の専攻と並行して、東北大学Field Design Centerにて産学連携のイノベーション人材教育プログラムを複数経験。

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「イノベーション」ここ数年で急激に耳にする機会が増えてきました。行政が主導する取り組みでは、経済政策の文脈の中でイノベーションの創出がコンセプトになっているものが多くあり、新聞などでもイノベーションという文字が多くみられます。書店も最近、専門書籍に加え、イノベーション創出のノウハウのような一般書籍が平積みにされているのをよく見かけますね。また、オンライン上で大学等の教育機関の授業を受けることが出来るMOOCs(Massive Open Online Coursesの略)と総称されるような教育サービスでも、イノベーションをテーマとした授業が多くみられます。こういった授業に対する受講生の注目度も、非常に高いものとなっているようです。では、なぜ、今、イノベーションがこれほど重要だと考えられているのでしょう。今回のエントリーでは、イノベーション旋風の中でも特にホットなトピックの紹介と、イノベーション旋風とも言える社会状況の背景にある本質的な理由について、i.labの考えをご紹介していきたいと思います。